仮住まいの人生だった
結婚するまで、わたしの住まいはずっと仮住まいだった気がする。
子供の頃はいつも寂しかった。
両親共にしつけに厳しく、幼い頃からあまり甘えた記憶がない。
兄もいたがあまり仲も良くなく、兄が小学6年生くらいになった頃から口を利くこともほとんどなくなった。
両親はいつも怒っているイメージだったし、褒められることがなかったので、自分はそんなに悪い子なのかと、自分のことも嫌いだった。
あまり笑いのない家族だった。
小学生の頃、放課後は友達と遊ぶこともあったけれど、だいたい自室で本か漫画を読んでいた。
本や漫画が大好きだった。
読んでいる間は主人公になりきって、理想の自分になれたから。
理想の家族に囲まれて理想の家に住めたから。
本を読みながら寝ていないか、指しゃぶりしていないか、
いつも母に監視されていた。
監視されていたという言葉は大げさは気がするが、どう考えてもその言葉がしっくりとくるので、実際そうだったのだと思う。
自室のドアは少し開けておかなければならず、
閉めてもこっそりと2階へあがってきて、ノックもせずにドアを開けて、
「なにやってんの!?」と怒られた。
いつも階段からの足音を気にしながら、本を読んでいた。
つい最近まで、家にいるとき、音楽をかけたりして他の音が聞こえなくなる状況が苦手だった。
自分の部屋が好きだったけれど、家は嫌いだった。
ちょっと買い食いしながら歩いてたらすぐに親や学校に通報する近所の人も嫌いだった。
そして、中学生か高校生の頃には将来は外国に行って暮らしたい、と思うようになった。
今思うと、ただ単に、心休まる居場所が欲しかったのだと思う。
そこではないどこか、どこか自由になれる場所に行きたかったのだと思う。